ご挨拶

明かりの灯し方

「夜物語」と出会い、上演を夢見た。様々な人々と出会う中で夢は目標に変わり、ついに昨年、現実となった。

「他者と出会い、気づいていく」。
この繰り返しの妙が人生だと言われて、納得のいく年齢に私もようやく達している。

これは「夜物語」のサブ・テーマでもある。
主人公たちは出会い、葛藤し、模索し、そして気づく。
別段、スペクタクルがあるわけでもなく、「生と死」がテーマの地味なストーリー。
だが、お芝居になる。
最初の出会いでそう直感した。9年も前のこととなる。

身の丈に合ったミュージカルとして「夜物語」を創り上げる決心をした。
努力と工夫を凝らす。
時に迷い、時にうろたえながらも、インスピレーションを信じて進んできた。

行き詰ると、故・パウル・ビーヘルさんが微笑む写真を眺め、生前に頂いたお手紙を読み返す。
その度に背中を押して頂いたような気がした。
舞台化を目指す我々の熱い想いに応えて、上演を許して下さった
パウル・ビーヘル氏のお嬢さん、レオニー・ビーヘルさんのご厚意にも救われた。

前回の公演で、クリエイティブ・スタッフは新しい才能と熟練の才能が結集。
時に妥協し、時に譲り、時に主張する。制約の多い条件の中で、通り一遍ではない知識と知恵の応酬。
そんな手間隙をかけながら、時間をかけて一つ一つの課題、難題を克服してきた。
苦しくても、この過程が芝居づくりの楽しさだ。
他にも大勢の方々との出会いが上演の実現へと導いてくれた。

そうして、ミュージカル「夜物語」は産声を上げた。
「夜物語」は多くの人々の善意と熱意によって支えられている。ただただ感謝。

私は俳優を育てる仕事もしているが、スターを育てているのではない。
私にとって俳優とは、一登場人物として作品を創り上げる大切な協力者・同志なのだ。
それ以上でも以下でもない。

私なりの演劇の明かりの灯し方を探ってきた。
昨年の上演を第一章とするならば、灯火を途絶えさせることなく、灯し続ける今公演は第二章である。
創り上げたスタッフ・俳優・そしてご来場くださった方の心に
愛に満ちた灯火の灯る事を願って。

羽鳥 三実広
平成22年度(第65回)文化庁芸術祭参加公演   羽鳥塾   シアタープロジェクト羽鳥
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