【秀逸な童話ミュージカル『夜物語』】 評論家 故・瀬川昌久氏
シアタープロジェクト羽鳥を主宰する羽鳥三実広が、オランダの作家パウル・ビーヘルの童話を自ら脚色・演出したミュージカル『夜物語』(11月3日~7日、前進座劇場)は、物語・音楽・ダンス三拍子揃って周到に準備された近頃出色の出来だった。
ビーヘル(1920-2006)の原作(翻訳=野坂悦子、徳間書店刊)は、おばあさんの家の屋根裏に住む小人が妖精と出会い、普通の生き物のように限りある生命をもちたいと願う妖精の遍歴をきいていく話で、色々な出会いを要領よくまとめて、ファンタジックで感動的な舞台に仕上げた。
日本の童話にはない原作の多様な登場者の面白さがWキャストで十分に活かされた。
妖精(野口智世・門川明日香)、小人(安福毅・喜多原拓人)、おばあさん(山田明美)など、それぞれの役柄を好演。
ナーンジャ、カーンジャ、フキゲンジャーと名乗る3人の魔法使いのそれらしい振る舞いも秀逸。
小人を囲むドブネズミとヒキガエルも動作や台詞廻しにコミカルな個性を発揮した。
その他、総計30余名が2役以上のせりふと演技をよくこなした。
肝心の歌とダンスもレベルが高い。音楽ナンバー24曲(作曲=本田成子、鈴木喬子)全て旋律が美しく、ソロと合唱のバランス良く、高音をきれいに出した。
弦を主体にしてブラスの強音を使用しない伴奏編曲(小島良太)が効果的。
ダンス(振付=松永さち代)は場に応じて多彩。妖精の群舞はバレエ風に、フルエの女王の軍隊は早いテンポの激しい踊りで攻撃する。
キャストは四季など劇団出身が多いが、羽鳥塾生もおり、羽鳥の指導で相当の芸水準を身につけている。
作品としての完成度は相当高いと思うので、ぜひ定番になって欲しいと願う。
月刊ミュージカル 2010年12月号 バラエティ時評