主催作品
ミュージカル 孤児マリア
脚本・作詞・演出:羽鳥三実広
作曲:鈴木喬子
振付:松永さち代
編曲:小島良太
企画・製作・主催:シアタープロジェクト羽鳥
2012年/2014年 俳優座劇場にて上演
コラム1
作品、歌唱とも高水準の出来~羽鳥塾の傑作「孤児マリア」 評論家 故・瀬川昌久氏
劇団四季出身の羽鳥三実広が主宰するシアタープロジェクト羽鳥が、ミュージカル「孤児マリア」を再演(8月28日~31日、俳優座劇場)した。羽鳥が脚本・作詞・演出を手がけたオリジナル作で、ディケンズの「オリヴァー・ツイスト」の時代背景を参考にして、19世紀の英国の孤児院で育った15歳のマリアが世に出て苦難のみちを歩む道程をドラマチックに画く。
羽鳥は四季に27年在団し、舞台製作にも関与した経験を生かして、10年前から自身の羽鳥塾での俳優育成と制作活動を続けており、本作は2012年に初演し、好評を得たので、今回更にグレードアップし構成を緻密化した。
マリア(蒔田優香と今野愛のWC)の父(六ツ﨑武至)は母(坂口祐未衣)を疎遠にして恋人にマリアを生ませるが、彼女は直ぐ死亡する。マリアが入れられた孤児院を運営するシスター(武木綿子)や福祉委員たちの狡猾な振舞いや孤児たちへの虐待の赤裸々さは、ディケンズ原作からの引用だが、当時の英国社会の実相がショッキングに画かれる。
マリアを囲む孤児たちの間のあくどい妬みやいじわるに対し、マリアがどこまでも一人で責任をとる状況が、巧みな脚本と孤児役6人の好演によって、すがすがしく感ぜられる。マリアが逃亡して贋作工房のベラおば(塩田朋子)に助けられ、マリアの絵画の才能が発揮される過程は明るく演ぜられ、特に塩田の演技は文学座で鍛えただけにアカヌケしている。
一方マリアの義母兄フレデリック(伊藤謙吉)が父の遺産相続の少ない恨みから、マリアをおとしいれようと画策して贋作の罪を暴露する。 裁判の席でマリアの叔父の軍人ベングラー(田代久雄)が現れて、マリアの実相を解明して、遂に無実をかちとる。マリアはラストに、これからも力強く生きていく決意を述べて幕となる。
マリアのたどる道程に多様な事件が織り重なる経過を要領よくコンパクトにまとめた脚本がプロの芸を実証して面白く教えられることが非常に多い。 出演者のせりふ、歌唱共に明瞭で、良くコントロールされている。音楽(鈴木喬子)は、ナンバー23曲、いずれも情感を巧みに表現した旋律を、ソロ、重唱ともに美しくこなし、実力的に高水準の出来だ。
筋書きが予見されるような大劇場作品が多い中で、羽鳥作品はもっとロングランするに足るオリジナル作品と思う
週刊オン★ステージ ミュージカル評 2014年9月12日版
コラム2
- 観劇感想1
孤児マリア9月1日昼の部を観させて戴きました。
あっという間の2時間。展開にワクワクしながら楽しませて頂きました。
「希望の歌」のとおり、振り返らず、前へ前へと進むことが、現実の世界でも一番大切なことと思える毎日です。
心温かく勇気を頂けた作品に出会えて、嬉しくなりました。
孤児院の少女たちの刺繍の演技はとてもリアルでした。ダンスも力強く、引き込まれました。
舞台のセットも興味深く、画廊の絵画のシーンには驚きました。
劇場に足を運び、非日常の中に身を置くことの楽しさを充分味わうことが出来ました。
歌、芝居、踊り、音楽、舞台の総合芸術。これからも素敵な作品を観せて下さい。プログラムもとても楽しく拝見しました。
P.S.当日、アンケートが書けなかったのでお便りさせて頂きました。
- 観劇感想2
本当に素敵な舞台でした。
友人から、『ミュージカルの終わりの方の台詞はまるであなたに向けて話しているようだった。
私達は今を生きなくてはいけませんよね。なるべく私も全てを受け入れ、出来るだけ良い方へ進むよう、努力したいと思います。
頑張りましょう!』 とメールを貰いました。
舞台を見ていて、素直に入り込んで見ている自分に戸惑いなから、自意識過剰とは思いつつ、言葉が、自分に向けられているようにも思え、心に響きました。(女性 50代)
- 観劇感想3
ミュージカルは人生で2回目でしたが、感動しました。
前半の孤児院での暗く絶望的な場面も、主役のマリアの希望に満ちた輝きが、一層際立っていました。
素敵な歌声や演技もどれほどの練習の賜物かと思うと、想像できません。
美しい言葉の数々を胸に留めたいと思います。(女性 20代 学生)
写真:山之上雅信 山口ヒロユキ
主催作品
ファンタジー・ミュージカル夜物語
脚本・作詞・演出:羽鳥三実広
作曲:本田成子 鈴木喬子
振付:松永さち代
編曲:小島良太
原作 パウル・ビーヘル
翻訳 野坂悦子
企画・製作・主催:シアタープロジェクト羽鳥
2009年/2010年 前進座劇場にて上演