銀河劇場オンステージワークショップ2008
降雪予報が出ていた2月9日の土曜日。銀河劇場(天王洲アイル)で「オン・ステージワークショップ」が行われた。
テキストはホリプロで上演された「ピーターパン」の上演台本から抜粋。私が考案し、A4用紙6ページほどにまとめた。使用ナンバーは6曲である。抽選で選ばれ、参加した受講者数28名。上は40歳代の女性から下は9歳の女の子まで多岐にわたり、中学生、高校生、一般の合わせて4名の男性も含まれていた。
演出と演技指導を私が担当し、振り付けは松永さち代君、西島美子君が歌唱と音楽指導に当たる。もちろん羽鳥塾ミュージカルクラスの講師仲間だ。照明や音響、舞台進行は何と銀河劇場のプロのスタッフさんがついて下さる。ワークショップと言えども豪華である。
今回のワークショップ。副題を「ミュージカル入門 レッスン~お稽古~本番」までとした。ミュージカル俳優が日頃行うレッスンと、実際に本番の舞台に上がるまでの過程をミニ体験してもらおうという試みである。
プログラムは【A】レッスン編、【B】ピータパンの稽古編、【C】本番と、大きく3つに分けた。
まずは午前中に【Aプログラム】①ダンス ②歌唱・発声 ③台詞・発声を行う。
午後に入りピーターパンのテキストと楽譜を使った【Bプログラム】④コーラス稽古 ⑤本読み ⑥振り付け ⑦総稽古。
そして最後に【Cプログラム】⑧本番(発表会)の順である。もちろん全て銀河劇場の舞台を使って行う。
3つのプログラムを午前10時半から昼食をはさんで午後4時までで行おうというのだから、少々無茶ではある。しかしただ面白おかしいワークショップにはしたくなかった。受講者には束の間の俳優修行を体験して頂きながらも、作品創りがスタッフと俳優による共同作業であることを少しでも理解して欲しかった。
さて、テキストや楽譜は前もって受講者一人ひとりにお渡ししていた。だから自分がどの登場人物を演じるか興味津々だったはず。配役は当日の午後、【Bプログラム】開始直前に発表した。
【Cプログラム】「本番(発表)」に向けて一番懸念していたのはダンスである。「アイム・フライング」「ウェンディ」「海賊の歌」の3曲の振り付けに当てられた時間は僅か90分。
失礼な言い方ながら受講者は素人であるから、正直言って私は、いくら松永君といえどもダンスまでのレベルには至らず、立ち位置を決めて構図を作るのが精一杯だろうと予想していた。
しかし嬉しい誤算!受講者の多くにダンスのレッスン歴があり、やさしい振り付けながら、松永君もプロのダンサーに教えるノリで振付けを始めたのである。おかげで予定より15分ほどオーバーしたものの、真に「ミュージカルらしいダンス」となった。
そしていよいよ本番(発表)。当日に発表された配役である。台詞や歌詞が出てこないのは当たり前。だからテキストや楽譜を手にして演じるよう勧めたのだが、誰一人持たない。えっ・・・?本当・・・?大丈夫・・・?
私は少々慌てたが、やがて驚きは感動に変わっていった。「うまい」とか、「下手」などの評価は無用であり無粋。皆さんの「一生懸命さ」に打たれてしまった。何と言っても、演じようという「集中力」が素晴らしい!自分の持っている技量の中で精一杯やろうとしていて、ただただ「ひたむき」。プロになるための充分条件と断言するつもりはない。が、必要条件であることは間違いない。
総括。今回受講された皆さんは演劇に興味をお持ちの方ばかりであろう。願わくはこれからも劇場に足をお運びになり、お芝居やミュージカルを厳しく優しい目で御覧頂きたい。そうやって劇場文化を育てて下されば幸いである。
また、きちんとしたレッスンを積んでプロを目指してもいいのではないかという才能も、今回数人お見受けした。いつかどこかでお会いするかもしれない。それも楽しみである。
ワークショップが終了した当日の夜、予報通り雪が降った。あの日、受講者の皆さんは無事に家路につかれただろうか。