羽鳥塾の稽古1

3月15日に開講した羽鳥塾のグループレッスン。22日、29日と3回のレッスンが終わった。生徒は毎回6~7名で、ほぼ同じメンバー。参加理由は様々。
 
 ・外の演劇学校や演劇教室に飽き足らず参加した方
 ・これから劇団や演劇の大学を目指す方
 ・現在プロダクションに所属していて、これからオーディションを受ける方
 ・既に芸能界で活躍しているが、今一度自分の演技をチェックしたい方


まず初めに行うレッスンは「声を出すこと」。発声である。
日本語は基本的に胸式呼吸で語られやすい。それを腹式呼吸にのった発声にしなければならない。
およそ言語を発する表現芸術において、発声を鍛錬し、言葉をコントロールしないものはない。
私の方法論はそう信じるところから始まっている。
レッスンはまず「発声の基本」と「発想の仕方」を行い、この両者の融合を図る。

ではそのレッスン風景。
スタジオには私独自のボキャブラリーが飛び交う。個々の生徒に取らせるポーズもユニークなものばかりだ。そのほんの一例を挙げる。

  ① 正座して額を床につける 「おがみ倒し」
  ② 喉を開けるために行う  「アゴ上げ」
  ③ 大きく開けっ放しの口に手を突っ込む 「親指と人差し指でロックして発声」

数え上げればキリがない。これらは全て腹式で声を出させるためのエクササイズだ。
腹式の発声にするにはノドを開かなければならない。ノドさえ開けば、腹式にならざるを得ないのだ。お腹を無理に動かそうとするのが腹式発声ではない。


次には実際の台詞のレッスン。単語ごとに腕を大きくバツ印に空を切らせたり、振り回したりさせながら、台詞をしゃべってもらう。これは「手切り」と名づけたエクササイズで、言葉を自分のものにする感覚を養うレッスンだ。さらにエクササイズは次の「3段階」と呼ばれるものに移っていく。

 ①「無感情ポジションのロング」。生徒はノドを開け、台詞の一音一音を各2秒以上
   発音しながら言葉を語っていく。ほとんど棒読みに近い。
 
 ② 今度は生徒個人がその台詞を言うための「事情」「理由」「動機」を考え、それらの
   「思いを込めた息を吸ったり吐いたり」を繰り返す。

 ③ ①で行った体のポジションを保ちながら、②の息に台詞の言葉を乗せて行く。

芝居をするというのは、芝居をすることではない。いささか禅問答のようだが、「芝居をしよう」、「演じよう」とすることが、体に余計な緊張を与え、発声は胸式となり、芝居が小さくなってしまう。台詞は単なる説明に過ぎなくなり、登場人物が語るべき言葉とはほど遠くなる。それを片っ端から指摘して、台詞を腹式に落とさせ、合わせて生徒個人の言葉として発するよう指導していく。これが私のやり方だ。


自分で言うのもおこがましいが、ユニークでユーモア溢れるレッスンが私の信条。リラックスして心を和ませながらメソッドの正しさを認識してもらう。このページを読まれた方はご自分で実践してみるのも手だ。


「グループレッスン」の利点は自分のことは分からないが、他の生徒がやっているのを見ると、その理論の正しさが分かるという点にある。初めて芝居をやる方は、まずは他人という鏡を通して、自分を知ることだ。その積み重ねが自分自身を確実に育てていく。理論に裏打ちされた実践、確かな耳を持つ指導者がいれば、俳優は誕生する。

1時間半のレッスンが毎回2時間を越え、グループレッスンに参加している人も私も時間の感覚を忘れるほど集中している。教えることを「天職」と考える私にとってまことに充実した時間だ。

しかし「教えることは教わること」でもあり、私自身、毎回生徒さんに多くのことを教わる。だから私は自分のことを「先生」と呼んで頂くのをお断りしている。「羽鳥さん」で結構。このことを一生変える気はない。

2004年04月01日