教師のためのワークショップ in 東京 前編
「全国高校生活指導研究協議会」の夏の全国大会が、8月3日から5日まで東京・港区・芝にある私立の学校を会場として行われた。
講演、交流会、分科会など催し物が目白押しで、大会参加者は200名を越えたという。私は「教師のための発声・表現・演劇講座」と題したワークショップの依頼を受け、40数名の先生方のご来場を頂いた。
北は北海道、南は九州・沖縄から自費参加された、ほとんどが現役の教師の皆さんである。年齢も20歳代から50歳代と多岐に亘り、教師としてのスキル向上のヒントになればと思っての参加であることは間違いなし。私の責任は重大。
教育現場と俳優の育成。共通点は多い。予め紀要原稿として「俳優教育と教育現場 共通項の考察」を提出。皆さんには配布済みである。
ただ、それをこのワークショップでもう一度なぞらえるのでは意味がない。時間も3時間と限られている。原稿は読んで頂ければご理解頂けるのだから、この日やることは「実践」。私は芝居屋。体当たりするしかない。
この日のテキストとして新たに用意したのは、不登校をテーマにした著書から引用・抜粋したもの。40数名ひとり一人に少しでもいいから声を出してもらい、腹式発声の効用を説く。普段は大声を出している先生方だが、この日はそうはいかない。教師といえども俳優ではないのだから、緊張から声が細くなってしまう。
「ロックの『ア』→「ロックをはずした『ア』→「子音のロング」→「子音の喋りスピード」と、日頃、羽鳥塾で飛び交うボキャブラリーが先生方に向けて発せられる。もちろん笑いも必要だから、軽口を叩きながら和やかにワークショップを進ませる。
「歩きながらの発声」、「ジョギングでの発声」等々も羽鳥塾ではお馴染みのものだ。「拝み倒し」と呼ぶお腹の裏の自然な膨らみも、実際に私の腰に触ってもらい、体感してもらった。
つまり、普通は半年ほどかける羽鳥塾の基本発声を、この3時間に満たないワークショップでダイジェスト版として体験してもらったわけだ。
「その話し方では怒気は届くが、肝心の先生の意思・思いは伝わってこないのではありませんか」、「先生にそのつもりはなくても、権威越しに押さえつけようという内面の無意識が生徒に見透かされているような気がします」等々、私も随分勝手な感想をお伝えした。ご立腹された方もきっといらしただろう。
最後の40分間は質疑応答。様々なご質問、ご相談を受け、どれも興味深かった。その中の一つ、男性教師のS先生が打ち明けられた悩みをご紹介する。
「壇上から指示を出しても、生徒がなかなか私の言うことを聞いてくれない。騒いだままなんです」。1分ほど話し続けたであろうその切々と訴える言葉は会場中に響き渡った。もちろん声量は充分。聞いている教師の方々にも覚えのあることであろう。皆、水を打ったように静まりかえっている。
「ではこちらに来て、実際に教室でやっているように、生徒に語りかけて下さい」。
私の促しに応じて前に出てくると、S先生は私の横で、普段実践していることを始める。
「みんな、静かにして!これから~~します。云々カンヌン~」。